61人が本棚に入れています
本棚に追加
パタン…!
暗く誰もいない自分の部屋の扉をゆっくり閉めて、リンクはその扉に背を預けた。
無音の空間に、一つのため息が響く。
リンク『舞踏会…。行きたかったなー…』
リンクはホコリが積もった机に歩み寄り、その上にポツンとあった写真立てを手に取った。
中身がない空っぽの写真立て。
母は俺を産んですぐ死に、父は後からやって来た義母に毒を盛られて殺された。
俺たち親子がそろった『思い出』などなく、片見である親の写真も義姉に燃やされなくなってしまった。
せめて、面影となるようにと中身がない写真立てを自分の部屋に飾っているけど…。
リンク「…お母さん、お父さん」
俺は寂しいです。
リンクはベッドに崩れるように倒れた。
枕に顔を深くうずめて声を殺して泣く。
とにかく、早くこの家から抜け出したい。ただ逃げるだけじゃなくて、あのうざったらしい義姉に追われないような理由をつけて。
?『墓場においで、可哀想なシンデレラ。僕が君にいいモノをあげるから』
ふいに頭に聞こえたまだ幼さの残る少年のような声。
顔を上げて部屋を見渡しても、人影を見つける事はできなかった。
リンク「…。」
そういえば、数年というもの父母の墓参りに行ってないや…。
ずっと家の中で働かされてたし。
ふと思い返し、リンクは足早に階段を降りて玄関で革靴を履く。
扉を開け、家の前咲いていた薔薇を一輪摘み取り近くの丘へ走っていった。
薔薇は幸福の色?
人は朽ちて消える
情けや『恋』なんて
意味が無いんだ。
だから
俺は人を愛せない
.
最初のコメントを投稿しよう!