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『俺』に『感情』は
なくなってしまったのかな。
嫌というほどの
毎日の暴力の『恐怖』に
慣れてしまったからかな。
誰もいない丘の上にある墓場に来ても、足が止まることはなかった。
聞こえるのは
秋を知らせる虫の声と
自らの足音。
リンクは、一つの粗末な造りの墓場の前で立ち止まった。
周りのような石造りなどではなく、ありあわせの木板を十字架に似せただけの墓標。
それには、今は亡き愛おしい家族の名前が刻まれている。
リンク「…久しぶり、しばらく来れなくってごめんね」
手に握っていた薔薇を墓標の近くにそっと供え、十字架に巻き付いていた蔓をむしり取っていく。
良かった。
まだ壊れてない…。
?「よく来たね、シンデレラ。僕は君を待ってたよ★」
ふと近くから、先程聞こえた幼さない少年の声が聞こえた。
左右にキョロキョロ見渡しても、やはり姿は見えない。
リンク「あなたは誰?」
?「僕は上だよ★」
上?
試しに見上げてみると、視界に何か布のような物がヒラヒラと落ちてきた。
慌ててそれを受け止める。
リンク「これは…!!」
?「君の落とし物でしょ?交番まで届けるのも面倒くさかったから★」直接届ける方がよっぽど面倒だと思うのは俺だけかな?
受け取ったのは、風で飛んでいったお気に入りのバンダナだった。
リンク「ありがと…って、あなたは誰?」
?「僕は、ただの森の妖精さ★」
そう言って頭上の木の枝にちょこんと座っている桃色の生き物は無邪気に笑う。
?「僕の名前はカービィ。よろしくね、リンク★」
森の精霊は何でも知ってるんだな。
というか、本当の名前を呼ばれたのって何年ぶりだろう。
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