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「こらこらー君。ちょっと待ちなさい」
深夜の公園で全裸の男が歌いながら踊っている。
「待った先には桃源郷」
「はいはい、とりあえずこれ巻いてね」
職務後の帰宅途中にたまたま通りかかった公園。警察という責任と自覚が全裸の男にブルーシートを手渡せた。
「あんた名前は?」
「はっしーです」
男は踊っている。
「電話番号を教えてもらえるかい」
「はい、はっしーです」
「なるほど。したら署まで来てもらうけど言いたいことはあるかい」
「僕ははっしーなんですよ。はっしーの恐ろしさと驚異を今思い知らせて差し上げましょう」
はっしーは両手を天に向けて目をカッと開いた。
その瞬間…
「はっしーです」
はっしーだった。
「歩ける?車乗れる?あそこに僕の車あるから乗ろうね」
はっしーはよたよたと車に向かって歩いている。
「はっしーさんはおいくつなの」
「右往左往、五里霧中、停滞前線、昨日炭酸。何か言った?」
「いやあ、すごい逸材だ。ぜひとも我が研究所に来て頂きたい」
公園のトイレから白髭のおじいさんが白衣を着てやってきた。彼は博士だった。
「はっしー…ヒト科、ヒト類、一人全裸。おいで、私の研究所に」
「ちょっと、困りますね。はっしーさんの格好見て…」
……ビュン!
二人は消えた。
警察としての役目は果たした。
彼は家路をゆっくりと歩いて帰った。
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