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俺は今仕事帰りの電車に乗っている。席がすかすかだったため、難なく座ることができた。
その正面には30代半ばくらいの女が座っている。
俺の趣味は人間観察。その人に気づかれないように行動を観察し、何を考え、その行動に出たのかを考察するのが大好きだ。
とかいう間に女はカバンから本を取り出した。が、しかし直後10秒も経たないうちに本を閉じて眠ってしまった。
…寝るんかい。
どうして眠るのに本をカバンから取り出したのだろうか。
本を取り出す前までは眠気はなくて、眠気を追い求めるがゆえの読書。その効果は即座にあらわれほんの10秒でまぶたはクローズダウン。
ただ周りから読書をする女性として見てもらいたかったが眠気に負けた。
読書の後に眠るという一連の流れに魅力を感じた。読書は睡眠の布石である。
本を開く前から眠気はあったのだが今朝、あるいは先ほど読んでいた小説の続きが気になり……いや、それにしては開いたページが序盤すぎる。
真相はわからない。でも彼女は眠っている。
そこに至るまで無数の意図、あるいは生理的条件が彼女にふりかかっている。というより俺がふりかけているんだ。
ここに俺の存在意義がある。ああ、すごいぞ俺。狂っていやがる。
それにしてもずいぶんと気持ち良さそうに眠るんだな、この女。
とかいう俺も実は眠気マックス。どうせ降りるのは終点。一眠りしようとするか…。
なぁんて考えてるのかな、あの男は。
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