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「さてはっしー君、君をこの研究所に連れて来た理由、君ならわかるね?」
全裸の博士は言う。
「はい、はっしーです」
白衣に身をまとったはっしーはそれに応える。
「なかなか。久々に素晴らしい実験材料が捕まったよ、ねぇ助手君」
「はっしーです」
「いやいや、さすがだねぇ」
もちろん博士に助手などいやしない。
「これから行く場所、そこで今世紀最大の実験を行おうと思っているんだよ。なにしろ1200年も生きていたら毎世紀ごとに大きな実験でもやっていかなければやっていけないよ」
「確かに」
博士は続ける。
「誰かに愛情を溜め込めばその分、消えた時の悲しみは増大飛躍。周りの言葉は日を追うごとに進化変貌。ここ200年くらいはそう鬱で何をやるにも気が進まない」
はっしーは逆立ちしながら床に置いた紙パックジュースから伸びたストローを吸っている。
「おっと、嬉しさのあまり愚痴を溢してしまったね。話すとキリがない。前の実験材料にはたった20年くらい私の愚痴につきあってもらっただけで逃げられてしまったからね」
博士はパンツをかぶる。
「さて、行こうか。実験場へ」
「はっしーやねん」
「ここにきて関西弁を巧みに使いこなす…。おっと泣いたのは何百年ぶりだろう。さあ、私の手に捕まるんだ」
逆立ちしたはっしーはそのまま片手を伸ばして博士に捕まり、激しい光とともに姿を消した。
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