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「僕さあ、モノを触るとその色がわかるんだ。嘘じゃないよ。嘘だと思うならこの手のひらに何か乗せてごらんよ」
祐輔は目をギュッと閉じ、上に向けた手のひらを差し出して見せた。
その正面に座る浩平はその手のひらに青い消しゴムを載せた。
「青でしょ」
「えーすごーい!どうしてわかるのー」
「僕もよくわからないんだ。この前気付いたんだよ。目をつぶって何かに触るとね、頭の中に色が塗られたように見えるんだ」
祐輔は自慢げに言う。
「そっかーすごいなー。そしたら今日僕の家に来てくれない?当てて欲しい色があるんだ」
「うん、もちろんいいよ」
放課後、二人は約束通り家に集まった。
「ねえ、当てて欲しい色ってなに?」
「うん。今持って来るからちょっと待ってて」
浩平は机の引き出しをゴソゴソとあさっている。
「あ、あったあった」
そのまま手に取った物を背中の後ろに回し、それが見えないように戻ってきた。
「はい、目つぶって手のひら出して」
祐輔は上に向けた手のひらを出した。
「違う違う、手のひらは下に向けて」
「え、こう?」
上を向いていた手のひらは下に向けられた。
「うん、そうそうそのままだよ」
浩平は背中の後ろからライターを出して火をつけた。そして祐輔の手に近づけた。
「どう?何色?」
「えーわかんないよ。でもちょっと熱い色…もっと近づけて」
「どう?」
「かなり熱い色…まだわかんない。もっと近づけて!」
「どう?わかっ…」
バタッ
祐輔は急にその場に倒れた。
その後病院で死が確認された祐輔の司法解剖を担当した医師は、祐輔の頭を切り開いたとき驚愕した。
祐輔の脳はドロドロに溶けていた。
「まるで…頭の内側から火であぶられたような状態なんですよ」
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