其、不良

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昨日の食堂での一件で、白熊さんと誠の仲が良くないのは、何となーく解った。   まぁ、それはいいとしよう…。電話番号を聞かれた時に特に何もされなかったから、仮に白熊さんが誠を嫌っていても俺に身体的な危害は無いみたいだし…。 代わりに精神的ダメージが凄くて今にも折れそうだけど…。 そのせいか、今緩みきった涙腺からまた涙が零れ落ちそうで落ちそうで。 …あ、誠が嫌われてるって考えたら余計に心のダメージが…。 …あぁ、涙が…。 「……、リュウが怒らせるなって言ってた意味が漸く解った…」 さっきから、夏木の名前を口にする白熊さんだけど、その度に鋭く細められた双眸が一瞬柔らかくなり、口元も微かに緩んでいる。 距離が近いからそんな表情も、別に気付きたくもないけど見逃せない…。 その様子からも、この白熊さんも夏木に惚れ込んでる1人なんだと、解った。 「……っ」 そんな白熊さんが、にゅっと右腕を伸ばして俺の目元に触れてきた。 突然のことに驚いて、反射的に目を固く閉じ、体も堅くしていれば、目元を何かで強く擦られた。 うっすらと、ちっぽけな勇気を振り絞り目を開けてみると、白熊さんのカッターシャツの袖口が、視界いっぱいに映った。 どうやら、俺の涙を拭ってくれているみたい…。 けど、ちょっと痛いんですけど…。  
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