其、不良

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乱暴に、浮き上がっていた涙まで拭ってくれた白熊さん。   眼力、言動、睦月を一撃で吹き飛ばした白熊さんは、怖いことに変わりは無いけど、昨日の放課後の階段でみせた(至近距離での電話)意外な行為や、今みたいな優しさのせいで、白熊さんに対する人物像が未だに定まらない。 それに、食堂で初見した時の第一印象は、寡黙そうな人。階段で会った時も口数は少ない方だったから、そうだと思っていたのに…。 「男なら、簡単に泣いたりなんかするな。喧嘩の最中に泣いたって、相手が手を止めることなんてないからな」 …よく、喋る人だ。 しかも、俺が泣いていた理由が、単に頭突きのダメージと感情の高ぶりのせいだというのに、睦月が怖かったから。みたいな誤解までされているみたいだ…。 「………何だ?」 相変わらず至近距離の白熊さんを、どれが普段の白熊さんなんだろうかと、ジッと白熊さんを見ながら考えていたら、不審に思ったのか眉を寄せて訝し気にそう呟いた。 それに俺は、何故か馬鹿正直に… 「…寡黙な人かと思ってた」 そう零してしまった…。 「………」 「………」 白熊さんも固まり、一瞬の沈黙が流れたことで、自分の失言に漸く気付く。  
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