其、フルーツタルト

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  「……はぁ…」   その場のがれの苦しい言い訳のおかげで、今日はフリルエプロンを着なくて済んだけど、さっきから溜息が止まらない。 憂鬱な気分と共に出ていくこの溜息が、俺の幸せを削っていたとしても、俺にとっての幸せは自分の家にあるから、特にどうとも思わない。あ、居候する気満々の夏木のセクハラは勿論、幸せの圏外地帯だ。 まぁだから、幸せ云々については気にはしていないけど。 って、こんなこと考えてる場合でもないんだけど…。 若干、現実逃避気味の頭をふるふると振り、様々な邪念を名残惜しくも脳内から追い出す。 水上と双子に連れて行かれた竹中先輩の遺言を果たすべく、俺は、いつでも調理が始められるように準備を整える。 こんなに広くなくてもいいだろう…、と度々感じる大きな調理室に、均等に備え付けられた16の調理台。 その内、今日使うのは、5台のみ。 …いつもの部活日(調理曜日)ですら部員数が少ないから1台で事足りるけど、授業の調理実習でもっても、この調理室の台を全て使っているのを見たことがない。 まぁ、そんな情報は今はどうでもいいとして。 とりあえず今は、使用する調理器具×台数分を、各台の足元の棚から引っ張り出して、使わない台へと置いていく。 そしたら、その台で調理器具を松永先輩が洗ってくれる。  
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