其、フルーツタルト

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竹中先輩が嬉しそうに着ていた向日葵のエプロン。   梅田先輩にやたらと似合う、裾が波形に切られた薄桃色の生地でピンクの大きなハートが胸元で主張するエプロン。 製作者本人が着る割りには随分とシンプルな、紺一色の胸元に白兎のワッペンが映えるエプロンを含め、いつから準備していたのかは知らないけど、全部が手作りだなんて、ホント、凄い人だ…。 きっと、水上の分も用意していると思うけど、…俺のは、無いのかな?…あの純白エプロン以外の普通のやつ。 ……。 それで、まぁ…、昨日は掛け持ちの園芸部に行っていた竹中先輩と、相変わらずな幽霊部員の梅田先輩を除いた俺達で、今日の準備を進めていたんだ。 …え? もう1人足りないって? ……さぁ、誰のことを言っているのやら…。 「ミチルっ…!!! 昨日から何で俺を無視するんだっ…!!?」 「……」 噂をすれば何とやら?いやいや、噂も何も、故意に視界から外していたい人がさっきから俺の隣で必死に叫んでるから、徹底的に無視してるだけだ。 「ツバサっ、お前からもミチルの頂けない態度に何か言ってやってくれっ!!!」 「…うるせぇな、役立たず。鈴倉は黙々と手伝ってるだろ、見習え、役立たず」 加勢を、助け舟を求め、松永先輩に縋るもざっくり綺麗に一刀両断された揚句、毒を盛られてしょぼーん…と沈んだのは、我らが家庭部(頼りない)部長、香先輩だ。  
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