其、フルーツタルト

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部長と同じ顔をした双子の弟の生徒会長が大好きな梅田先輩に関しては、香先輩に見向きもしない。   何が、梅田先輩の態度まで変えるのだろう、と疑問にも思っていたけど、今ならそれが少し解る気がする。 会長の響先輩は、気弱だけど優しいからね。 それに比べて…。俺にとって何かと危険な伊吹の入部条件を勝手に提案し、実行に移し、しかも成立しかけの部長を、俺が恨んでないはずがない。 昨日からメールも会話も軽くスルーすれば、香先輩は原因が解らないと嘆く。 でも、部長なのに完全なアウェーであろうと、めげない気の強さがこの人の悲しくも良いところ。 ただ、外見は良いから、香先輩を部員以外の前で無視を続けるのは、正直、俺の身が危ない。 何度も言うが、外見は良い。 この人の、ファンクラブが無いはずがない。 現に、フルーツタルトの実演中の竹中先輩を取り囲む1年生の一部が、さっきから何だか鋭い視線を向けてくれている。 何度か目が合ったけど、勘違いでもない。この感情を抱いた視線は、一番よく知っているから、ね。 「おい、カオル。材料配分するから手伝え」 「まぁ、ミチルが無視するのは、ツンデレもしくは焦らしプレイに目覚めたと解釈しておこう。つかよ、俺を顎で使うのはお前ぐらいだぞ、ツバサ」 キュッと蛇口を閉めた松永先輩が、何やら相当理解不能な言葉を俺本人の前で堂々と漏らす香先輩を引き連れ、竹中先輩が居る台の方へと歩いて行った。  
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