ハジマリ

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「我々は人類という種を保存しなければならないのである。そのためには、君達の頭脳が必要なのである!」 ちょっと昔の世界大戦時の、独裁者の市民への演説の話し方は一種の洗脳に近いものがあると聞いたことがある。 今の彼の口調は正しくそれに等しい。 『洗脳』。誰もそんなことはできないと笑いの種となるが、実はそうでもない。 テレビのコマーシャルをはじめとする各種広告。 流行ですら、企業による洗脳といえるかもしれない。 洗脳は意外と身近にあるものかもしれない。 それは極限状態にあればあるほど、その効力を強くする。 『死』との隣合わせが実に効果的であるだろう。 「洗脳……ちょっと考え過ぎかもな」 「何がー?このワインおいしいー」 芳醇なアロマ、程よい酸味と渋味、甘味も程よい奥行きある赤ワイン。 「このワイン、高そうー。でも少々酸化が進み過ぎかな」 高そう、と言いつつワインをグラスになみなみ注ぎ、一気に呷るその姿は、まるでビールでも飲むかのように見える。 全くこいつは……。
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