見えない敵

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「そんな事があったの?」 ソファーの上でテレビを見ながら、事の顛末を聞いていた陸が驚く。 「うん。さすがにちょっと参っちゃった」 「なんか言われるかも、とは思っていたけど、風紀が乱れるとはね」 「社内でイチャイチャしてるわけでもないし、仕事はちゃんとやってるのに。あんな言われ方して気分が悪かったわ」 コーヒーの入ったカップを二つ手にして、美里が陸の隣に腰を下ろす。 「サンキュー」 カップを受け取りながら陸が言った。 「でもなぁ…世間からはそう見えるって事だよな」 「どういう事?」 「“藤井取締役が若い男に現をぬかしている”って」 「…それ、ムカつく」 美里はコーヒーを一口すすった。 「だって事実じゃん。美里、俺に夢中だろ?」 「そ、そんな事ないもん」 「よく言うよ~」 ソファーに寄り掛かり、陸は大きく笑った。 「俺もお前に夢中だしさ。お互い様でしょ」 陸が美里の頬に触れる。
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