二話 接触

2/26
前へ
/319ページ
次へ
   火曜日。  複雑な心境で出勤して仕事に当たったけど、中々集中しない状態で、ロールケーキの出来上がりの時間になった。  押し寄せるお客さんをさばきながら、その時だけは何も考えずに仕事が出来たのは、ある意味で助かった。 「そろそろ、お昼の時間ですね」 「詩織ちゃん、今日は喫茶コーナーの方をお願いできるかな」 「はい、分かりました」  強引に昼間の時間帯に喫茶コーナーを、詩織ちゃんに押し付けて、ボクがテイクアウトコーナーをやる事にした。  それは、石原 薫が来るのかどうかを確認するため。 「もしも、来たならば……」  そう言いながら、来ないだろうと思っていた。手紙にも書いてあったし、石原 薫を演じる必要も無くなった。  昼休みの時間帯、予想通り石原 薫は来なかった。  お陰でショートケーキは、ほとんど売れなかった。まあ、2個だけ売れても大して変わらないが。 「じゃあ、詩織ちゃん食事に行ってきて」 「はい、行ってきますね」  変わりのない日常がここにあって、穏やかな時間が流れていた。    
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5346人が本棚に入れています
本棚に追加