5346人が本棚に入れています
本棚に追加
平和だと感じていた時間は、あっけなく崩されてしまった。
エアポケットのように、お客さんが途切れて店内にはボクだけの状態で、完全に気を抜いていた。
目の前に、ごつい四駆でメタリックの外車が止まった。
「いらっしゃいませ……」
その車を降りて店に来たのは、ジーパンとジージャンに赤いキャップを被った、若い女の子だった。
ただ、サングラスをしてるから、顔を見ることは出来ない。
そして、少しの時間ショーケースを眺めると、あるケーキに目を止めてサングラスを外した。
「ショートケーキを、2つ」
「はい、お待ちください」
気にはなったけど、箱にケーキを詰めて会計を済ます。そして、お釣りを渡す。
石原 薫なら、会計はいつもピッタリで支払っていた。
「こちら、お返しとお品物になります。ありがとうございました」
「どうもありがとう。亮くん、油断しすぎてない?」
「えっ……」
サングラスをかけ直そうとする、その瞬間に見えた顔はあの石原 薫だった。
最初のコメントを投稿しよう!