二話 接触

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   直接アパートに帰らないで、商店街の本屋に飛び込んだ。それは、きっかけと言うか、何か考え方のヒントを掴むため。  そのくらい、追い詰められていた。  中学生の時、期末テストでヤマをはって大外しで、筆箱に1本だけ入れていた鉛筆を、サイコロ替わりに転がす気分。  ただ、当たる確率は何十倍も低い。 「溺れるものは、藁をも掴むってな……」  虚しい独り言は、気分を萎えさせる。  就職情報紙、資格取得のテキストなど、職業に繋がりそうな書籍を片っ端から、紐解いてみても特殊な職業で、当てはまりそうなものは無い。 「そんなに、単純じゃ無いよな」  落胆の気持ちの中で、無意識に手に取った雑誌を開いた。  もはや、目的は時間潰しになっていた。  手にしたのは、女性週刊誌だった。 “本年度、期待のニューフェイス。各業界のシンデレラ。”  そんな見出しの記事が、何故か気になってページを捲った。 「あれ……」  特集記事の、最後の最後で目が止まってしまった。    
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