二話 思いの矛先

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   昨日の手紙と言うか、自転車のカゴに張り付けてあった、紙を自分の部屋の机に置いたままにしていた。  一応は、薄いピンク色の紙で可愛らしくはあるけど、ゴシック体の文字は明らかにプリントしたものだ。  これが、手書きでかわいい文字で書かれていたなら、送り主を想像してニヤリとしたかもしれない。 “亮くん、いつも見てるよ。そして、応援してるから”  この手紙を、見つける前に起きた2つの気になる事。  江口さんが見たっていう、カメラのフラッシュみたいな光。  ボクを食い入るように見詰めてた、誰かも分からない視線。  だからこそ、引っ掛かって仕方がない手紙の存在。 「なんなんだろ……」  呟いてみても、何も変わらない。もちろん、答えなんて誰もくれるはずがない。  ふと、思い付いた言葉が口に出た。 「まさか、別れた彼女の誰かが……」  でも、あり得ない。  ボクがフッたなら、分かるけどフラれたのは、こっちで今更だけど応援なんてするはずない。    
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