第一章 一話 日常の中の非日常

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   堺町かかし通り商店街。  近代的なオフィス街に隣接し、老舗の店もいくつか存在する、それ自体が老舗と呼べるような商店街。  町内会長曰く、総店舗数が40店らしい。 「なんで、かかし通りなんですか?」 「絹川くん、よくぞ聞いてくれたね」  町内会長は嬉しそうな顔で、ボクに商店街の名前の由来を語りだした。その語りは、所要時間を15分ほど要した。  一言で言えばこの辺りが昔、田んぼだった事からその名が着いたらしい。  ちなみに、町内会長は最古参の呉服屋さんのご隠居で、午後に商店街を徘徊していて週に何度かこの店にも来る。  【ケーキショップ 樹】  それが、ボクが働くケーキ屋だ。 「絹川くん、孝ちゃんはいるかい?」 「店長ですか、呼んできましょうか?」 「ああ、商店街の寄り合いの事で、話しがあるんでな。よろしく頼むよ」  『孝ちゃん』と呼ばれたのは、この店の店長の沖 孝一郎さん。  三年前にボクの事を、この店に雇い入れてくれた恩人ともいえる人だ。    
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