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掴まれた腕の痛みには気付かなかった。
それほどまでに私の心は憎悪に満ちていた。
「放して!…っ、放せ!」
「随分な言葉遣いだな。一国の王女とあろう者が」
暴れる私とは正反対に、冷静過ぎる程の男が言う。
「うるさいっ!よくもこの国を…、父さまと母さまを…!!」
男に罵りの言葉を浴びさせようとした私の視界が不意に反転した。
直後、ドサリという鈍い音が背中に響く。
私は男に押し倒されているのだと気付くのには時間がかかった。
一瞬、何が起きているのか分からなくて。
ただ、息もかかるほど近くにある男の怖いくらいに整った顔を停止した思考で見ている自分がいた。
「っ、何を…!」
「黙れ」
低くそう言い放たれた途端、近かった男の顔との距離が一気に縮まった。
「―……!!!」
唇に柔らかな感触と、見開いた先の視界に赤があるのだけは分かった。
何が起きている?
私は……
「…!!!ん…っ!」
停止していた思考は、絡めとられる自身の舌の感触によって覚醒させられた。
キス、されている。
「――――!!!」
衝撃的な現状に、私はパニック状態になった。
必死に暴れて逃れようとするが、押し倒された身体は男によって拘束され、身動きが出来ない。
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