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「えっ?ちょ、愁也くん!?」
いきなり泣き出した僕を見て狼狽えながらも背中を擦ってくれるヒロさんの暖かさにますます涙が溢れてきた。
「ありがとう…ございます、っ…上手くいくかわからないけど…僕頑張ってみます…!!」
涙を拭って笑って見せれば、ヒロさんがギュッと僕を抱き締めて"大丈夫"と呟いてくれた―――
「…頑張って、愁也くん」
ずっと黙って見ていた恵さんが、俺からヒロさんを引き剥がして優しく微笑んでくれた。それだけで何だか元気が出た…
「ご迷惑おかけしました…僕も伊久くんも…」
恵さんが僕の分までお金を出してくれて、何から何まで初対面なのにお世話になった自分が恥ずかしかった。
「頑張れ!!次に会う日は、愁也くんと桐澤が笑顔で笑い会える日だな」
「あ!!あの狂犬に"消毒しといたから"って伝えといてもらえますか?」
「あ、はい!じゃあ、ありがとうございました!!」
深く頭を下げて二人にお礼を言えば、僕はゆっくりと伊久くんの家へと足を進めた。いつの間にか雨は止んで、楽しそうに水溜まりで遊ぶ子供や寄り添う恋人を、暖かい太陽が照らしていた。
ちなみに、恵さんが、僕の心の想い人とも言える役者、一条暁臣さまの舞台の脚本家だったと知るのはもう少しだけ後の話…
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