二章 非愛

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「…あ‥あ…」  その光景をただ観ていたロゼは、ひどく動揺していた。 「ヌシのおかげで、労せずに捕らえられたわ。」 (…私の…所為?) 「…………っ!」  かすれた声に、ロゼは黒い衣の人物を見ると息をのんだ。  顔を覆っていた黒い衣が風に揺らめき、その顔を僅かに覗かせていた。  人間じゃなかった。   髑髏(しゃれこうべ)  人の頭蓋骨がそこに有った。  皮膚も肉もない。 耳は無く、口は歯が剥き出しになり、黒い煙を吐き出し、眼には瞳の代わりにどす黒い光が有った。 「ヌシがあの童の注意を逸らしてくれたおかげだ。 結界も破れたしの。」 「っ!」 「ロゼに触れるな!!」  ロゼへと骸骨が腕を伸ばすとジークの気炎の声が辺りに響いた。  ジークは人間二人分の重さを振り払うと、全力で走り出した。  ハルバードの射程に入るとジークは躊躇う事なく、刃を振るった 「おっと」  骸骨は焦った様子もなく、アッサリと避けると距離をとっていた。 「ロゼ、退くよ!」 「え!? でも!」 「黙って!」 「っ!」  ロゼの言葉は、慌てた様子のジークに二の句を言わせなかった。 「転移『ライドー』!」  ジークはロゼを抱き締めると、カードを発動させその場から退避した。 「逃げたか、まあ良い。 どうせあのキズでは助かるまい。」  骸骨は言葉と共に夜の闇の中へと歩いて行った。
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