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その声が響いた方を向けば、長身でスラッとした体型の美女がラフな服装で剣を構えていた。
「ね…姉さん!?」
「え!?」
と、アリサが叫んだ。
どうやら彼女はアリサの姉のようだ。
「私の妹に何をしようとしてたかは知らんが、下手に手を出せばお前達の首が飛ぶぞ?」
「クッ、まさか『疾風のクレア』が現れるとはな…引くぞ!」
「おう」
と、男達は街の方へと消えていった。
「大丈夫かアリサ?」
「はい。私も大樹さんも無事です」
「タイキ?ああ、あの青年か」
「はい。数日前に家の前で行き倒れていたようなのでお助けしたんですが、いろいろ手伝ってもらって助かってます。それに喧嘩も強くて、さっき来た男達の前に来た男達をあっさり仕留めました」
「ほう、それは頼もしいな。しかし、魔法が使えるようには見えなかったが…」
「あの~…さっきから置いてきぼり食らってるんすが」
久しぶりに会った姉妹が話し込んでいるため水を差すつもりはなかった大樹だが、何やら自分の話をしているのなら自分を抜きにはして欲しく無いだろう。
「ああ、申し訳ない。私はクレア・マーガトライト。アリサの姉だ。よろしく」
「梶原大樹です。よろしくお願いします」
と、二人は握手を交わした。
「そういえば、君はこの辺では見掛けない顔だな。何処から来たんだ?」
「非常に信じがたい話でよければ…」
と、これまでの経緯を話した。
「ふむ…そういえば、この地方の太守であるグリフィス=ローズが、何か召喚術を試しておられるとか聞いた。その関係かも知れんな」
「へえ…」
そのまま語り合い、それなりに打ち解けたクレアと大樹。
「ところで聞きそびれてしまったんですが、クレアさんは何の職についてるんですか?」
「一応賞金稼ぎだ。それとたまに傭兵もやっている。私たちには親がいないから、必然的に姉である私が稼ぐしかなかったんだよ」
「…すいません。悪いこと聞いて」
「なあに、気にすることはない。それにあと一年は遊んで暮らせる金は稼いで来たからしばらくはここに残る」
「へえ、そりゃまた大変ですね」
「まあ、ある程度なら慣れれば楽だ。そのおかげで『疾風』」なんて名前を付けられてしまったがな」
と、苦笑するクレア。
美女はそういう仕草も魅力的に写るから憎いものだと大樹は思った。
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