第一章 異世界

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「……どういうことだ?」 少年、梶原大樹は呆けていた。無理もないが。 喧嘩を終えて帰ってきて即行で眠り、朝目覚めたら窓の外の風景がガラッと変わっていたのだ。 部屋の様子は普段と変わらない。一人の時間を過ごしていた自分の部屋だ。それはいい。 だが、ベランダに通じるはずの自分の部屋の大型の窓から見える風景は、立ち並ぶ見慣れた民家などではなく、舗装されていないグラベルの路面。 「…寝よう。きっとこれは夢だ。うん。今すぐ寝よう」 と言って再び布団に入った大樹。しかし、物音がした。誰かが階段を上がってくる音だ。 「…そろそろ起きるか。やっぱ」 そう言って体を起こす。そして軽くストレッチをすると体が凄まじい音を立てた。 「あだだ…」 「大丈夫ですか!?」 いつの間にか入ってきた少女。 若干戸惑いながらも返事を返す大樹。 「ああ、何とか…」 「よかったぁ…庭で倒れていたのをここまで担ぎ込んだんですよ。怪我とか無さそうですけど、体調はどうですか?」 「ああ。もう清々しいくらいいいッスよ。俺は梶原大樹ッス。助けてくれてありがとう。ところでどちら様ッスか?」 「ああ、申し訳ありません。私はアリサ・マーガトライトといいます。アリサで結構です」 そう言って少女は柔らかく微笑んだ。 可愛らしい顔立ちに、まだ青いものの程よく成長した体。流れるようなストレートの金髪は背中まで伸びている。 例え大樹の世界のどんな美少女を連れてきても劣ることはないほどだ。 「そういえば、この部屋は…」 「それは…分かりません。この部屋にある物が何なのかもよくわかりませんし…」 「ああ、それなら俺はわかります。どうやらベースとなっているのは俺の部屋みたいッスから」 「そうなんですか?都市の人はこんな部屋で何をしているんでしょうか…」 アリサが呟く。 しかし、ここはどこなのだろうか? 見たところかなりの田舎のようだ。和風の田舎ではなく、洋風の田舎。 ずっと大樹が考え込んでいると、アリサが何か言い出した。 「あの~…」 「はい?」 大樹が聞き返すと、アリサは苦笑して、 「お腹すきませんか?」 「ええ。もうかなり限界近いッス」 大樹が苦笑しながら答えると、アリサはクスッと微笑んだ。 一々可愛い。 「では朝御飯にしましょうか?もう用意が出来たので呼びに行こうと思ってたんです」 「いいんですか?」 「はい」 「あざーっす!」
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