15章:2-1=0

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いつもと変わらない1日。 ただ違うのは、帰り道に大野がいなかったことだけ…… やっぱり、いないんだ…… いつも隣を歩いていた奴が、いなくなっただけ… ただそれだけなのに、なんなんだ… この孤独感…… あいつと何話してったっけ…? ダメだ… 給食の笑顔しが出てこない。 なんだよ… なんなんだよ…… なんで大野のことばかり考えてんだよ… いつもヘラヘラしてて、俺の話しを何でも真剣に聞いてくれて、突然、変なこと言い出したりして…… ただそれだけなのに… 胸が痛い… 誰か… 誰か… 俺を1人にしないでくれ…… 頼むからいつもみたいに、話しかけてくれ…… 大野…… お前は俺の何なんだ……? なんでいねーんだよ! ダメだ… 自分に押し潰されちまいそうだ…… コンコン…… 「……奈々子… ちょっといい…?」 部屋にずっと閉じこもっていると、母ちゃんが入ってきた。 「……奈々子… 何かあったの…?」 優しく話しかけてくる母ちゃん。 「……あ… うん… まあな……」 「そっか…… やっぱりあったか……」 そう言ったっきり、何も聞いてこない。 ずっと側にいるだけ。 何か言いたいけど、張り裂けそうな気持ちの中、なかなか言葉が出て来ない。 「……あのさ… あの…」 「なあに…?」 「もしさ… 母ちゃんの大切な人が、大変なことになってたら… いや… 大切な人って言うか……」 「大切な人かぁ~… 例えば私の場合、子どもたちってこと…?」 「いや… そうじゃなくて… もっとこう… なんて言ったらいいんだろ……」 「ん…? 家族とかじゃなくて… あっ! 好きな人のこと…?」 「いや… 好きって言うか…」 俺、何言ってんだ…… 「その大切な人が大変なことに巻き込まれてしまったら、どうしたらいいんだろうって……」 「う~ん… 奈々子はどうしたいの…?」 「どうしたいかわからないから悩んでんだよ…」 「ううん… 違うの。奈々子は助けてあげたいんでしょ。守ってあげたいから悩んでるんでしょ?」 「えっ…」 「大切な人なら絶対に助けるべきよ。絶対にダメだとわかってても助けに行かないと…」 「母ちゃんは助けに行くの?」 「あのね……」 母ちゃんはゆっくりと話し出した。 「明夫さん… 奈々子は小さくて覚えてないと思うけど、お父さんのこと……」 俺が2歳の時に亡くなった父ちゃん…… 「もう会えなくなって、こんなに時間が経ってしまったのに、未だに後悔してるのね……」 少し悲しそうな母ちゃん。 「治らない病気… 絶対に治らないとわかっていても、もっと何か出来なかったのかって、ずっとずっと思ってるのよ」 それは… 「明夫さんに会いたいのよ。ずっとずっと会いたいの。ずっと好きなままなの… 愛しているの……」 母ちゃん……
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