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12章:ムーンライト
月の明かりだけが差し込む、暗い牢獄。
俺はずっと大野に、今までの出来事を説明していた。
「……ってことなのよ。」
「嘘だぁぁ! ななこさん、またぼくを騙そうとして……」
ちょっと待て。
この状況で、お前を騙してどうする?
「だから大野くん、嘘みたいな話しだけど信じて…」
「またぁ… 嘘みたいじゃなくて嘘なんでしょ?」
さっきからこの繰り返しで、半笑いで聞いている大野に、ちょっと腹が立ってきた。
「ちょっと博士からも説明を……」
「くっくっくっ…… 説明… わしが説明… 」
さっきから気になってたんだよ。
なんで横でずっと笑いをこらえてるんだよ。
「何がおかしいんですか? 私の説明…?」
「いや…… 話しの内容じゃなくて… その言葉づかい… くっくっくっ……」
言葉づかい…?
「私とか、博士とか…… さっきまで俺とか爺さんとか言ってたのに……」
「あーーーーー!!!」
思わず大声になる。
し…しまった…!
いつものクセで大野の前だと…
「な…何です? 突然大きな声を上げて…?」
「ううん… 大野くん、何でもないの… ちょっと博士、色々とありすぎて疲れてるみたい… 博士、ちょっとあっちで肩でも揉みましょうかね?」
「肩揉みなら、ななこさんよりぼくの方が…」
「う~ん… いいの…いいのよ。大野くんは、ちょっとそこにいてね。さあ博士、こっちへ……」
笑いを我慢出来なくなっている爺さんを強引に引っ張り、ちょっと離れた所に連れて行く。
「あのな爺さん! 大野は女の俺しか知らねーんだよ!」
「話しを聞いててそれはわかったんじゃが、あまりにも…… くっくっくっ……」
「いいか? 面倒なことになるから絶対に言うんじゃねーぞ!」
「わ…わかった… なるべく我慢して……」
「こら! 我慢とかじゃねえ! な? お願いだから……」
「わかった…わかった… そりゃ大切な彼氏にそんなことバレてしまったら大変じゃからのう……」
「だから彼氏じゃないってーの!」
「はいはい… わかった…わかった……」
そう言い、大野のとこへ戻る爺さん。
ちょっと待て!
まだ話しの途中…
爺さん、大野に話し始めやがった。
まっ…いいか…
また説明するの面倒だし…
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