2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
子供のころ 熱でうなされた夜は 必ず怖い夢をみていた 広い真っ白な 果てしなく白い部屋 そこで立ちすくんでいると 部屋一面を覆い尽くすほどの大きなボールが転がってくる 潰される 目をギュッと閉じた瞬間 私は大きなボールの上 空気が抜けた風船のようなその感は楽しくもあり怖くもある でもやっぱり恐怖の方が勝っていて 降りたい 自分の部屋に戻りたいとひきつった心で願う それでも現実の世界には 柔らかな自室のベッドの上にはどうしても戻れなくて 潰される恐怖と広すぎる白い空間への恐れに涙をながすしかない 子供の時以来しばらく見なかった夢を 熱でうなされた夜に久しぶりにみた あのまま大きなボールに潰されてしまってずっと目覚めなければよかったのにな そう考えた私は もうすでに生きることを諦めてしまっているのかもしれない 子供の頃からの変わらない夢 いつか私を向こう側へ連れていってくれることを 大人になった私は願っている
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!