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本当に世話がやける。保健医がこれでは生徒に示しがつかない。
やれやれと思いながらも、とりあえず丞を空いているベッドへ押し込んだ。
「教頭先生に言ってきますから、おとなしくしててください」
そう言って丞の側から離れようとした時、熱を帯びた掌が僕の手首を掴んだ。
「ここにいてくれ、浅陽」
「何言って……」
「頼む」
潤んだ目で僕を見上げる丞。……僕は高校時代をふと思い出した。当時学校で熱を出した丞が、今と同じように傍にいてくれと強引に引き留めたのだ。
そうだ、あの時は――。
「なぁ、デコに手をあててくれ。浅陽の手は冷たくて気持ちいいから好きなんだよ」
「……!」
『好き』
丞にとってはなんでもない言葉が、僕の胸の鼓動を速める。
――ダメだ。このままではおかしくなってしまう。早くこの場を離れないと、気持ちのコントロールが出来ない……!
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