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「タオルを濡らして来ますから。おとなしくしててください」
ようやく言葉を絞り出して、僕はその場から立ち去ろうとした。しかし、丞の手が僕の腕をしっかり掴んで離さない。
「何でだ? 何でそんなに俺から逃げようとすんだよ」
僕の背中を伝って、丞の不満げな声が聞こえる。僕だって傍にいたい。でも気持ちを抑えきれなくなったら……。自分でも何を言うか解らないんだ。
頼む、離してくれ、丞……!
頑なに振り向こうとしない僕に呆れたのか、それとも熱で辛いのか――。程なく腕は解放された。
「あー、頭いてぇ……」
誰に言うでもなく、言葉を発する丞。取り敢えず教頭に話をしに行こうとカーテンを開けると、そこにはバツの悪そうな顔をした水沢が立っていた。僕はその時、どんな顔をしていただろうか。
「み、水沢さん、戻ってたんですか?」
動揺して上手く言葉が出てこない。そんな僕に水沢がこう言った。
「えっと……。紫月先生と神原先生は友達なんですよね? 友達同士っていいな、と思って」
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