1.悲痛の音色を纏う音楽家

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  「ごめんな…」     男はバイオリンと横笛の箱をその手に持って,お世話になっている人の家へ帰ろうと立ち上がった。       「ああ…」       そこで後ろを振り向き,初めて自分のしたことの愚かさに気付く。       「ごめんよ…僕は何てことをしてしまったんだ」       男は泥がついてしわだらけになった楽譜を丁寧に拾いあげて軽く整えると,大事そうに胸に抱えた。       「でも僕には才能がないんだ…。無能な僕に生み出されたことを恨まないでくれ…」      
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