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その男は優れた才能を持っていた。
それは,様々な楽器を自在に操り,誰もが聴き惚れるような美しい音色を奏でることができる才能。
彼が持って生まれた才能は,ただその音色を奏でることだけではなかった。
自らの感情を,あるいは心に感じたものを音に乗せて,独自の曲を生み出すこともできた。
人々は彼の音楽の虜になり,楽士たちはその男を人生の目標として,日々努力していたが,誰一人として彼のような魅惑のメロディーを生み落とすことはできなかった。
男は美しい音色を奏でる喜びと,美しい音色を生み出す喜びをかみ締めながら,曲を作っては楽器をならしていた。
しかし,ある日,男は誰にも真似できないような音を出せなくなった。
新しい楽曲も生み奏でられず,男は絶望と悲嘆にくれながらその国を去った。
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