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「ま、まだお互いよく知らないから……ごめんなさい」
いきなり答えを出されてしまった。
しかし、案外しっかりと断ってくれたので、達夫は安心した。
大事にされなくてよかった。と達夫は思った。
「……」
しかしやはり、ショックだった。
勇気を振り絞って伝えた人生で初めての告白はあっさりと失敗に終わってしまった。
「本当に、すいません……」
「い、いえ!そんな!あああ、貴女の言う通りです!」
受け答えするのが精一杯だ。
「そ、それでは、僕はこれで。まま、また……会えるといいな……」
言った。
「はい。また会えるといいですね。それじゃ……さよなら」
そして、高島恵は非常階段から下の階まで降りていった。
しかし
達夫がこれで終わるわけがなかった……。
高島恵が降りていくと同時に、達夫に異変が起こった。感情が……より強力な感情が……彼を襲った。
「逃がさない逃がさない逃がさない……キミは……ボクのモノだ……逃げちゃだめなんだ……」
これは、神のお遊びか。達夫の心は先程とはうってかわって凶暴化していた。危険の二文字が空間に傾れ込み、彼は唾液を飲み干した……
達夫の心の奥の奥。
闇が芽生えた。
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