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手を離すと、次は手を振り始めた。
誰かを呼んでいる。
「アギドさ~ん!」
呼ばれたのは、髪を刈り上げた男。
小走りでこちらへ向かってくる。
走ってくる男の方を指して匣鈴菜が言う。
「ほら。こちらあなたの指導をしてくれる阿木戸(アギド)さん。」
「…阿木戸徹希(アギド テッキ)だ。」
「あ、よろしくお願いします。」
阿木戸とも、握手を交わす。
今度は握る力が強くて、手が痛い。
指導といってもそこまで難しいことはなかったが、阿木戸はしっかり教えてくれた。
そのこともあって仕事内容は、すぐに理解出来た。
しかし、体力がいる仕事で大変だった。
段ボールに何が入っていれば、こんなに重くなるのか?
数時間働いて、今日は終わりだった。
次のシフトの人と入れ替わり、何人かに挨拶をして帰る。
数時間だけだったが、体のあちこちが痛い。
家に帰って、ベッドに倒れこむ。
疲れたが、なんとかなりそうな仕事だった。
そんなことを考えていると、瞼が降りてきた。
どうやら抗えそうもない。
次に気付いたときには寝ていた。
慌てて起き上がる。
時計を見ると、数時間しか経っていなかったのでまた座り直す。
とりあえず明日の準備をすることにした。
それからもそこで働いた。
日を重ねていくごとにだんだん慣れていった。
後から知ったことだが、匣鈴菜は責任者だった。
知ったときには、声を上げて驚いた。
あんなにふわふわした人が、責任者で大丈夫なのかと心配になったが、なんとかなってるみたいだ。
仕事も少し内容が変わって、大きなものも運ぶようになった。
大きな機械は一度組み立てて、不備がないかを調べて運ぶ。
それで、いくつかの機械が置いてあったのかと納得した。
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