運搬開始

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
手を離すと、次は手を振り始めた。 誰かを呼んでいる。     「アギドさ~ん!」     呼ばれたのは、髪を刈り上げた男。 小走りでこちらへ向かってくる。 走ってくる男の方を指して匣鈴菜が言う。     「ほら。こちらあなたの指導をしてくれる阿木戸(アギド)さん。」   「…阿木戸徹希(アギド テッキ)だ。」   「あ、よろしくお願いします。」     阿木戸とも、握手を交わす。 今度は握る力が強くて、手が痛い。   指導といってもそこまで難しいことはなかったが、阿木戸はしっかり教えてくれた。 そのこともあって仕事内容は、すぐに理解出来た。 しかし、体力がいる仕事で大変だった。 段ボールに何が入っていれば、こんなに重くなるのか?   数時間働いて、今日は終わりだった。 次のシフトの人と入れ替わり、何人かに挨拶をして帰る。 数時間だけだったが、体のあちこちが痛い。   家に帰って、ベッドに倒れこむ。 疲れたが、なんとかなりそうな仕事だった。 そんなことを考えていると、瞼が降りてきた。 どうやら抗えそうもない。   次に気付いたときには寝ていた。 慌てて起き上がる。 時計を見ると、数時間しか経っていなかったのでまた座り直す。 とりあえず明日の準備をすることにした。     それからもそこで働いた。 日を重ねていくごとにだんだん慣れていった。 後から知ったことだが、匣鈴菜は責任者だった。 知ったときには、声を上げて驚いた。 あんなにふわふわした人が、責任者で大丈夫なのかと心配になったが、なんとかなってるみたいだ。   仕事も少し内容が変わって、大きなものも運ぶようになった。 大きな機械は一度組み立てて、不備がないかを調べて運ぶ。 それで、いくつかの機械が置いてあったのかと納得した。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!