2.神業

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腰元から抜き放った刀は、左手に握られたまま。 前に付き出した右手には、『羽』が握られていた。 的にぶら下がった林檎が、スクリーンにズームアップされ、『羽』のない矢を見た時、スタジオ内が驚きに息を止めた。 高速度カメラの映像が流れる。 矢は彼女によって切断されていた。 目隠しをした彼女は、矢の音を聞き取り、目の前を通過する瞬間に切断したのである。 5メートルからの矢を正確に捉える。 そして矢の進行を妨げず、超スピードで切断する。 悲鳴の様な拍手が響いた。 この後暫くは、殺陣のアクションで盛り上がった。 後から分かったのだが、協力してくれた高杉道場のメンバーは、 『私に当てれたら、なんでもしてあげちゃうから、マジでお願いしま~す。』 と言われ、真剣そのものであったらしい。 勿論、20人かかって、誰一人として、何もしてもらなかったのだが…。 そして、最後の幕が開いた。 目隠しをし、今度は弓を構えるMr.。 彼が目隠しをする前に置かれていた1個の林檎は、今は左右2メートル程離れて、2個になっていた。 そして、さっきまで林檎があった場所には、ラブが立っていた。 刀は既に頭上に掲げられている。 余分な服は脱ぎ捨て、胸部のサポーターとショートパンツ。 皆はこのセクシーな姿に一瞬息を飲み込み、これから始まる危険なショーに緊張していた。 衣服は動きを鈍らせる為、脱いだ。 ラブの目は、真っ直ぐに矢の先を見つめている。 Mr.は、それを知らない。 沈黙…。 『come on!』 (ビンッ!) 彼女の掛け声で矢は放たれた。 『シャーッ!』 (ヒュン!) 『キャー!』 (バシュ!) 女性タレントの条件反射的な悲鳴。 矢は縦に真っ二つに切られ、ラブの両頬僅か1センチを通り、見事左右の林檎に命中していた。 『ゥオォォ~!』 拍手する者、涙を流す者、叫ぶ者、様々に感動を表現していた。 『ティー・ラブ 今年最初の奇跡でしたぁ!!スゴイ!!』 スタジオは割れんばかりの拍手に包まれた。 こうして、彼女の熱い1年がスタートしたのである。
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