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4.特殊能力
『トーイ様、第1空隊パイロットのロビンであります。ボスニアまでお供します。会えて光栄であります。』
20代中頃の真面目そうな青年に、彼女は微笑んだ。
『ラブでいいよ。こんな夜中にごめんなさいね。アボット隊長は怒って無かったかな…』
怒ると、いつも自慢の髭をピクピクさせる隊長の顔が想い浮かんだ。
『いえ、髭は…笑っていませんでしたので。』
『ピクピク』のことを、空軍では「髭が笑う」と言っている。
『そっかぁ。ハハ。ロビン、ボスニアへは私一人で行きます。個人的なことで、貴方を危険に巻き込む訳にはいかないから。』
『トーイ…いえ、ラブ…様の為なら命は惜しくないです。』
『アハハ。「様」を付けるんじゃ、あんまり変わんないじゃん。それより、貴方の一番大切なものは、これでしょ!』
コックピットに乗り込んだ彼女は、フロントボックスに挟んであった赤ん坊の写真を手に取り、彼に渡した。
『あっ!、失礼しました!先月生まれたばかりで…。しかし、それとこれとは話が違います。それに新型機の操縦は…』
慌てる彼を楽しみながらも、ラブはメインスイッチを入れ、両手でそっと機体に触れて目を閉じた。
ロビンが驚く目の前で、ステルスのメインコンピュータが目まぐるしく動きだしていた。
特殊能力。
彼女は、マシンやコンピュータとコンタクトすることで、あらゆる情報をその頭脳に入力することができた。
隠し芸で見せた、人間離れした動体視力や瞬発力と同じく、これも多彩な特殊能力の一つである。
『ロビン、ThankYou! ちょっとこれ借りるね~』
この軽い乗りはここまで。
ステルスが真夜中の滑走路をゆっくり、まるで亡霊の様に進んで行く。
そしてその2分後には、ボスニアへ続く闇の空へ消えて行った。
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