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2.神業
『おめでとうございま~す。』
彼女の登場を、他のタレントたちも待ち侘びていた。
類い稀な美しさと魅力を持つ彼女は、誰もの憧れなのである。
『今年も明るくセクシーなラブさん。去年は、スーパーダーツで度肝を抜いてくれましたね~。今回はかなり危険なものを披露してくれるということですが…』
『はい。まぁ…少~しだけね。今回は、Mr.隠し芸さんにも手伝って頂きます。ねっ!』
照れながらも、Mr.が手を振る。
『では、スタンバイをお願いします。さてさて、どんなスーパーアクションを見せてくれるのでしょう。ヨロシクお願いしま~す。ラブさんの侍パフォーマンスです!』
ライトが薄暗く落とされたスタジオ。
ポツリ、ポツリと3つのロウソクが灯された。
その中心に、目隠しをして素足で立つラブ。
右手には鞘に収まった日本刀。
スタジオ内が静まりかえっていく。
『ィヤァッ!』
(ヒュン!)
一閃、空気を切り裂く音。
(カチッ!)
ラブが刀をサヤに収めた。
誰も肉眼では捉えることはできなかった。
高速度カメラの映像が、スクリーンに映し出される。
そのスピードは、人の成せるものでは無かった。
抜き放たれた刀。
右足を軸に一回転したラブ。
三本のロウソクは、全て真横に切られていた。
炎ですら微動だにせず。
皆が驚きの声を上げる。
それに一礼し、目隠しのまま自然体で立つラブ。
彼女から右5メートルに的が置かれ、左5メートルにMr.が現れた。
手にはボーガンを持っている。
的の前に置かれた林檎に向け、Mr.が狙いを定めていく。
再びの沈黙。
そして、
(ブンッ)
放たれた矢が、ラブの目の前を通る瞬間!
(ヒュッ!)
(バシュ!)
林檎は見事に射抜かれ、的に突き立った矢にぶら下がった。
皆はその光景に拍手を送る。
しかし、ラブの技に比べれば、それは些細な驚きであった。
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