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月明かりが照らす夜の中庭。
浴衣姿で泣いている蘭。
旅館で使ってるいつもの
桃のシャンプーの香りがした。
あれから何分経っただろう。
「大丈夫。大丈夫だよ」
俺は蘭の頭を撫でながら言った。
蘭は顔を上げて俺を見た。
俺も蘭を見て目が合った。
夜風が涼しかった。
不思議な感覚。
俺は蘭のこと好きなのか?
多分好きなんだろう。
だけど、お姉様も好きなんだと思う。
俺は蘭に引き寄せられた。
「コラー!ん~ん『し~』」
何処かでお姉様の声が聞こえた。
甘酸っぱくなかった。
涙でしょっぱかった。
懐石料理の茶碗蒸しの味もしなかった。
あまり覚えてないけど
蘭の唇は柔らかかった。
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