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「誰かが横たわっていて、あたりには真っ赤な血溜り。叫んで、助けを求めるんだけど自分の声も何も聞こえなくて…。暗くて、冷たくて、痛くて、苦しくて…」
さくらは目に涙を浮かべて苦しそうに強く胸を押さえた。
そんなさくらを見てチョコは泣きそうなほど胸が締め付けられた。
さくらは言った。
「私、この場所から離れることができないの」
チョコの住む街を一望できるこの桜の丘から、さくらは出ることができなかった。
「だから私、考えたの」
さくらはグイッとチョコに顔を近づけた。
「ここには私の死体が埋まってるんじゃないかって」
「死体………?」
「そう。私の死体。ほら、よく言うじゃない。“桜の木の下には死体が埋まってる”って」
あまりに確証のない噂話をいたって真剣な表情で言い放ったさくらに、チョコは暫く言葉が出なかった。
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