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初夏の香りただよう風が、さらりと自分を通り過ぎていく。
さくらは桜の木の枝の上に、幹によしかかるようにして座っていた。
もう、何度季節が巡っただろう。
ついこのあいだ桃色の花を咲かせていたと思ったら、今では青々とした葉をところ狭しと付けている。
「ねぇ、桜。今年こそあなたから離れられるかしら」
問いかけても答えは返ってこない。
ただ、ざわりと葉が揺れるだけ。
「今年こそ、もしかしたら…」
私のために頑張ってくれている友達がいる。
幽霊の私に出来た、人間のお友達。
「チョコ…」
風がさらりと流れ、さくらは瞼を閉じた。
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