137人が本棚に入れています
本棚に追加
新丘高校の卒業式は静寂の中、ゆっくりと行われる厳格な儀式だ。
簡潔に述べてしまえば、静かな中、だらだらと続いていく面倒な儀式だ。
しかし、僕はまだ2年生なので、今日の主役ではない。
在校生代表の挨拶をするわけでもないので、ただ退屈な時間を過ごすだけだ。
無理に出席する義務もないように思うし、事実、サボりを目論んでいる生徒も多々いる。
現によしなしごとを語っている今この瞬間でさえ、僕の脳は切々と睡眠不足を訴えてくる。
僕が睡眠不足であるのは、とある計画とそれにおける決意が原因。
まあ、僕がこのまま二度寝し、休日を気ままにごろごろと過ごすことも不可能ではないだろうけど。
それでも、僕は制服に腕を通した。
よいしょという気合いの掛け声と共に、僕のマイスイートホームであるぼろっちいアパートの階段を駆け降りる。
僕は僕で、この記念すべき旅立ちの日にやらなければならないことがある。
だって、星野先輩は、もう卒業してしまうのだから。
星野先輩は、卒業して、僕の前からいなくなってしまうのだから。
僕は彼女に、どうしても言いたいことがある。
たとえ、それが決して叶うことのない願望であったとしても、だ。
最初のコメントを投稿しよう!