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「話、逸らされるところでした」
ハーヴェイが白昼夢から戻ってくると、鷹のような片目が正面にあった。
「あのブタがあなたと話した後、やけにご機嫌だから、何かあったのかと思いまして」
「ああ、心配してくれたんか。ありがとう」
ハーヴェイは目元に皺を寄せる。
「しかしなんてことはない。ゴートン先生が欠勤したから、代わりに授業してくれというものや」
「そうですか。ところでどのクラスですか?」
「2-Cと5-Sだが……」
タバコを吸う手が止まる。
「5-S?
なるほど。道理であのブタ、ご機嫌のわけだ」
片目で臙脂色を睨む。殺気のこもった切れある眼。彼は教師になる以前、傭兵だったのだと改めて思った。
「悪いことは言いません。止めといた方がいいですよ」
「なんでや?」
「貴族の教員があのクラス行くと、あんな素晴らしいクラスはないって言うんですよ。でも平民の教員が行くと」
指で叩き、タバコの灰を皿に落とす。
「あんなひどいクラスはないって言うんです」
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