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「俺だってさ、頑張ればそこそこの料理できるわけよ。だけどイブリン様々が『丸ごとそのまま』なんてけったいな注文つけるから、何もできなかっただけで……」
言っていて気が昂ってきたらしく、泣き上戸の吸血鬼は顔を伏せておいおい泣き声を上げた。
「俺の腕が悪いんじゃないっ!それを、それを、あの冷酷な人間共め!!」
「大丈夫だって、挽回のチャンスは有る。お前が本気で作った料理食べれば人間だって見直すさ」
背中をさすって宥めると、吸血鬼はがばっと身を起こした。
「いや聞いてくれよ。実はその後にさ、低級悪魔の肉のステーキ出したわけよ。スパイス利かせて、隠し味もバッチリ使ってさ」
「良かったじゃないか」
「良くねぇ!奴ら不幸とか世界の話して、結局手をつけずに外に出ていっちまったんだぞ!?」
ニコラスは人目も憚らず嗚咽を上げる。
突然泣きわめく美男子に、客や従業員すらひいている。
「何何?俺が悪かった流れ?そりゃ、コックとかいうやつには劣るだろうけど、人間の口に合うように頑張ったよ?その努力を踏みにじるようなことしなくったって!人間なんか人間なんか……」
「ちょっとトーン下げろ。人の子らが見てるぞ」
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