ヴァンパイア執事

5/9
前へ
/164ページ
次へ
「俺だってさ、頑張ればそこそこの料理できるわけよ。だけどイブリン様々が『丸ごとそのまま』なんてけったいな注文つけるから、何もできなかっただけで……」 言っていて気が昂ってきたらしく、泣き上戸の吸血鬼は顔を伏せておいおい泣き声を上げた。 「俺の腕が悪いんじゃないっ!それを、それを、あの冷酷な人間共め!!」 「大丈夫だって、挽回のチャンスは有る。お前が本気で作った料理食べれば人間だって見直すさ」 背中をさすって宥めると、吸血鬼はがばっと身を起こした。 「いや聞いてくれよ。実はその後にさ、低級悪魔の肉のステーキ出したわけよ。スパイス利かせて、隠し味もバッチリ使ってさ」 「良かったじゃないか」 「良くねぇ!奴ら不幸とか世界の話して、結局手をつけずに外に出ていっちまったんだぞ!?」 ニコラスは人目も憚らず嗚咽を上げる。 突然泣きわめく美男子に、客や従業員すらひいている。 「何何?俺が悪かった流れ?そりゃ、コックとかいうやつには劣るだろうけど、人間の口に合うように頑張ったよ?その努力を踏みにじるようなことしなくったって!人間なんか人間なんか……」 「ちょっとトーン下げろ。人の子らが見てるぞ」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加