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「ロゼリア」
ニコラスが珍しく正式名で呼び掛けたので、心臓がとくんと脈打つ。
「俺たちはガキじゃねぇんだし、それぞれの道を歩むべきだ」
「私の、道……」
「そうだ。もう奴らは襲って来ない。どこへなりと自由に行けばいい」
ロゼには行き場がわからない。だから東西に翼を伸ばし旅を続けている。たまに会うニコラスが唯一の止まり木なのだ。
「それにさ、あの高慢ちきのイブリンもだいぶ丸くなって我が儘も減ったし、前より過ごしやすくなったっつーか」
ニコラスが細めた目には慈しむような優しさがある。
主は、力が在るゆえに孤独だった。
周りは彼の餌か臣下だけで共に肩を並べる同胞なんてものは存在しない。
それが矮小な人に興味を持って言葉を交わして、笑い合い、思いやるということを知った。
「人の優しさに触れた邪神がどうなるのか見届けたいんだ。
支えられるくらいの側で」
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