ヴァンパイア執事

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気の向くまま飲んで酒場を出る頃には、星に彩られた澄んだ闇だけが垂れ込めていた。 別れを告げるのを先伸ばしにしたくて、二人は町外れまで連れ立って歩いた。 けれどここからは方向が違う。 「それじゃ」 ロゼは外套の下から漆黒の翼を広げた。 「あのさ」 酔っていたはずの吸血鬼が素面の真剣さで話しかける。 「もし俺の奉公が解かれて、それでもまだお前の居場所が見つからなかったら」 「なかったら?」 ロゼは無垢に問い返す。ニコラスは酒気で赤く染めた顔を背けた。 「やっぱ何でもねぇよ、畜生!」 「何だ、そりゃ」 ひとしきり笑って、ロゼは子供の頃のように包容を交わす。 「次会う時まで、元気で。邪神殿に迷惑かけるなよ」 「いや、迷惑かけられているのはこっちだから」
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