理想

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ザードはやれやれと首を振った。 「先生もなかなか頑固ですね」 「オーウェンには負ける。あいつは死ぬまで頑固な理想家やった」 最後の最後まで、彼は理想を追い求めた。 『諦めろ。人間は差別する生き物や。歴史が語っとる。下を作って安心したいんや』 何度言い聞かせただろう。その度にあいつは笑って言うのだ。 『それなら、新しい歴史を作ろう。私は見届けられないが、種を残そう。いつか、芽を出すことができるよう』 ――馬鹿やな 現実があるから理想があるのだ。二つは絶対的に相入れない存在だ。夜空に浮かぶ星のように、手を延ばしても届かない。 それでも、彼を笑うことはできない。彼がどれだけ真摯に、理想を追い求めたか知っているから。
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