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「そこで古代に文明を持った名もない王国は、内乱によって滅んだのです」
あっという間に五時目がやってきた。ゴートンでないことに最初こそざわめきが起きたが、手短に事情を説明し、さっさと授業を始めた。ハーヴェイは手にした分厚い歴史書を読み進める。その背後で魔法をかけたチョークが話の要点を記す。白ローブの生徒たちは静かに授業を聞いている。
今は、まだ。
ハーヴェイの頬を電撃が掠った。黒板に文字を書いていたチョークが砕け散る。
「何かね?」
視線を上げ、冷静に尋ねた。怯まずにいられるのは、年のおかげ。先が短いので、どうなっても構わない。
「間違ってるんじゃないですか、その解説」
手入れされたブロンドの髪をかき上げ、青年が言う。嘲笑が沸き起こった。
こいつがマーシャルやな?
「知らないんですか、先生。名もない王国は、海の民によって滅ぼされたんですよ」
ここは強気で行こう。ハーヴェイは思いっきり鼻で笑ってやった。
「あの、国が滅びる度につじつま合わせのように現れる、胡散臭い輩にかね?」
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