理想

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ブロンドの青年は僅かに赤くなる。 「そうです。モーガン先生の学説によれば……」 「歴史の認識は変化するものです。何時までも固定の学説にしがみつく必要はありません」 ハーヴェイは声を張り上げた。 「二年前、デスビオ山の麓で石碑が見つかりました。それによれば、国王は従兄弟に殺され、守るべき理が崩れ、国が乱れました。その新国王も親戚や家来に命を狙われ、最後には宮殿に火を放ち、軍隊を引き連れ都を去ったそうです。彼らの行方は知れない」 マーシャルはぐっと奥歯を噛み締めた。 「そんな石碑、デタラメのことが書いてあるかもしれないじゃないですか」 「その可能性もあります。ただ、正体不明の海の民より、ずっと信憑性が高い。少なくとも成文化した証拠があるんやからな」 そこでブロンドより頭が回りそうなニキビ面の生徒が、助け船を出した。 「ちょっと待って下さい。それって、あなたの教える歴史が間違っている可能性もあるんですよね」
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