理想

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「でも革命が……」 「革命で何が変わった?既存の制度の崩壊? はっ、笑わせんな。相も変わらず貴族は貴族。権力を握り、威張り腐っている。 だから私はこんな小汚い店で、安い酒飲むはめになった」 ひどく空虚な笑い声を上げる。 「ハーヴェイ……」 同情したような声で言うから、慰めの言葉をかけるのかと思ったら違った。 「君の歴史に対する情熱は、その程度のものだったのか。貴族とか平民とかくだらないことごちゃごちゃぬかして、消してしまえるようなものだったのか」 刺ある言葉は、彼を奮い立たせるため。 「今あるものが真の姿ではないって、君言っただろ。我々は真実に近づくことができるよう、探究を怠ってはならないって。 僕は君の歴史への姿勢を、一人でも多くの、若い世代に伝えてやりたいんだ」 若かったな、と思う。 当時もだいぶ歳を食っていたが、今より若かった。 その言葉に突き動かされて彼は今、国立北魔法学校の教壇に立っている。
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