理想

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国立北魔法学校に、平民と貴族の生徒たちがいるように、教員にも平民と貴族がいる。そしてその間を隔てる壁も、また。 学校という教育機関である以上表立ってはないが、水面下では二つの熾烈な対立がある。 人間皆平等の教育理念に賛同している貴族もいるが、そうでない者もいる。そうした一部の貴族教員が、賛同者たちとわずかに机を離し、彼らだけのグループで群れている。 彼らは平民の教員を無視し、平民寄りの教員に皮肉を送る。中には貴族の生徒しか受け持たない者もいる。 ――オーウェン、お前の理想には程遠いな ハーヴェイは亡き友人に苦笑を送る。 ――それにしても 毒々しい臙脂色の髪の男は貴族側の席で笑い声を上げている。 ――彼から話しかけてくるなんて、珍しいこともあるもんやなぁ
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