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周りからは、さっきよりも厳しい目で見られていたのだ。
「あれ何してるの?」と子供が裕貴を指さし、隣の母親の裾を引っ張り聞いていた。
「きっと一人芝居の練習よ」と母親は苦笑いをしながら、子供に答えている。
ほかの人もひそひそ話していた。
『俺は普通のやつには見えないって何回言えば分かるんだよ』
『そいつ』は走り出していた。
『そいつ』はいわゆる幽霊というやつなのだ。
つまり裕貴は、周りからは一人で騒いでいる変な人に見られていたのだ。
「待てよ!白(ハク)!」
裕貴は走りながら『そいつ』の名前を呼ぶ。
白は走りながら後ろをみて『バーカ』と言っていた。
またしても、バカにされた裕貴は拳を強く握る。
裕貴は走りながら小言を言って、自分をおさえることにする。
「黒猫のくせに……黒猫のくせに……」
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