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さぁ、どうする?杏。
アンタがこれから一緒に暮らそうとしてんのは
……かなり危険な輩よ。
私はソファで暢気に寝ている奴の姿をキッチンで眺めながら、夕飯の準備に取り掛かっていた。
いつもは1人分だけど……今日は、まぁ今日だけはアイツの分も作っておいてやることにしよう。
私は手早く作った肉じゃがと焼き魚そして味噌汁をテーブルの上に行儀よく並べると寝ているアイツに目を向けた。
「ねぇ、夕飯作ったんだけど……食べる?」
危険回避策として私は50センチ定規を使って、アイツの背中を軽く突いてみる。
チッ、まだ起きない……仕方ないな。
近付いて背中を揺すろうとした、次の瞬間!
ガバッ
「俺様をウィルス扱いかよ?」
「ヒェェェー!見てたのぉ?」
慌てて逃げようとしたけど……
アイツの長い両腕が伸びてきて、私の首にピッタリと絡みついてきた。
うわっ!顔近いって!
私は足をバタつかせるも男の力にかなうハズもなく
………結局ムダな抵抗に終わる。
「………杏」
「なに?い、いいから離してよ!」
「俺を避けるな……」
「……へっ!?」
気付くと奴は……とても淋しげな顔をしていた。
その目は……あの日、私がアパートを引っ越す当日のあの幼い竜くんそのままだった。
「り、竜……?」
心配になって竜の顔を覗き込もうとした時。
「ふっ、騙されてやんの!」
そこには至ってフツーにムカつく竜の顔があった。
「このバカ竜!乙女の純情弄ぶなぁ!」
私の声は狭い家中に響き渡ったのは言うまでもない。
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